ボーイングと長期契約を獲得した東レに注目
合成繊維大手の東レが、米ボーイング社から航空機向け炭素繊維複合材の長期契約を獲得し、市場の注目を集めている。
これまで厳しい環境が続いてきた同社だが、今回の提携によって、長期展望が大きく開けることになる。苦戦が続く日本メーカーの生き残りモデルとしても注目されそうだ。
同社は2014年11月17日、米ボーイング社から航空機向け炭素繊維複合材を長期にわたって受注すると発表した。総額は1兆円を超える見通しで、同社は1000億円を投じ米国内に専用工場を建設する予定。
これまで炭素繊維は、非常に有望な素材といわれながら、あまり大きなビジネスにはなっていなかった。ここまでの強靱性を要求される製品というのは、ゴルフクラブなど限定的だったからだ。
東レの売上高のうち炭素繊維が占める割合はわずか6%。しかも、過去40年間、売上げの低迷と赤字が続いてきた。
炭素繊維が大きな市場となるためには、航空機のような大型産業分野での導入が不可欠である。同社はボーイングに対して、最新機種787向けの炭素繊維を供給しているが、ようやくその実績が評価され、次世代機「777X」への本格採用が決まった。
米国は今後、継続的な経済の拡大が見込まれているほか、人口の増加も期待できる。このため航空機の需要は長期にわたって増大する見込みである。
さらにいえば、航空機への本格的な採用が進めば、やがて自動車という巨大産業における炭素繊維の導入も視野に入ってくる。自動車市場も北米は拡大が予想されており、この市場を取ることができれば、同社の炭素繊維事業は一気に拡大するだろう。
米国市場が有望なら、単純に製品を輸出すればいいのではないかと思えるがそうではない。日本は途上国が作るような低付加価値の製品は手がけておらず、顧客企業の開発と一体になった製品展開が必要なのである。こうした状況では、国内で作ってただ輸出するというモデルは適用しにくいのだ。
今後、日本メーカーが、米国経済拡大の恩恵をうまく取り込んでいくためには、東レとボーイングの提携に代表されるように、開発から製造まで顧客と一体になって行い、製造拠点も米国に設置するというやり方が望ましい。東レの戦略は、今後の日本メーカーのひとつのモデルケースとなるだろう。
日本ではインフレの進行が予想されており、円安が進行する可能性が高い。輸出はしていないものの、ドル建ての売上げと利益は円安になれば増大するので、東レのような企業は、今後も継続的な利益成長が見込めることになる。東レはこれまで株価が低迷していたこともあり、非常に有望な銘柄といえるだろう。
東レの株は買ったのかって?
筆者は東レ株は買っていない。だが、合成繊維以外の分野でも、似たような動きが始まっている。その分野の銘柄はすでに購入済みだ。どんな分野のどの銘柄なのかは、読者の皆さんで考えて欲しい。大金を払ってくれれば教えるかもしれないが・・・
それはともかく、今後は、こうしたグローバルなオペレーションができる企業の株価とそうでない企業の株価の二極分化が起こってくるだろう。投資するなら今のうちだ。
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