投資の教科書

株式投資20年の投資家が語る 絶対に知っておくべき投資の真実

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シャープとルネサスはどう違う?~理解不能な日本メーカー

 

 今回は経営危機つながりのシャープとルネサスまとめて2社の話。同じ経営危機と言ってもシャープとルネサスは性質が異なる。違いがわかっている人は読まなくていい。

 簡単な話、ルネサスはオペレーションでミスをしているだけ。シャープと異なりルネサスは過剰投資で倒れそうになっているわけではない。
 オペレーションでミス、というのは、前回の繰り返しになるが、メーカーとのしがらみで高く売れるものを安く売っているという意味だ。だから高く売ればいい。安く売りたいなら安いものを売ればよい。

 財務体質が悪いわけではないため、まともに商売をしさえすれば潰れることなどないのだ。もし安く売るのなら、それに見合ったコストで抑える。
 でもそれもムリなのだろう。何しろ合併のメリットを活かさないまま3社をくっつけたわけだから。工場も人も何もかもそのままでくっつけたら、ただダメな会社が3社くっついだだけ。合併する前と何も変わらない。

 ちなみにエルピーダもコストが削れなかったという意味でルネサスと同じだ。本当ならば潰れるはずはないのだが、そもそも無駄な設備と人をそのまま残した合併だから、安くしか売れないメモリを売って食っていくには、コストが高すぎたのだ。坂本社長が優秀だったので、今年まで持っただけだ。

 それにしても、この人たちはなぜ合併したのだろう。ただくっつけるだけなら合併しても意味はない。ここで、タイトルにある「理解不能」のその1だ。

 半導体の製造プロセスというのは同じような製品を作っていても、会社によってかなり違う。工場の設備は5~10年単位で投資しているため、設備投資のサイクルが1サイクル終わらないと、業務プロセスの統合というのはできない。
 つまり、業務プロセスを統合することによって得られる合併の効果というのはすぐには得られないのだ。

 そもそもなぜ合併するのかといえば、基本的には規模のメリットを追求するためだ。コスト面からそれを考えると、設備とか業務プロセスを統廃合して無駄なものを省くか、クビを切るか。その片方かもしくは両方だ。合併するとしたら、どちらかはやらないと意味はない。

 ではルネサスは業務プロセスの統合ができるのかといったら実際はできない。前述の通り、各社バラバラだから、1サイクルおわらないと統合できない。しかも、それは当人たちが一番よくわかっている。当人が技術者だから。

 ということは、それでも合併したということは、論理的に考えればクビを切るということにしかならない。果たしてそのつもりだったのだろうか。いや違うだろう。

 業務プロセスの統合ができないことがわかっていながら合併して、クビも切らなかったというのなら、株主からみたら背信行為だ。あえて会社を苦境に陥れていると言われても、言い逃れできない。でも株主は本人だからねえ。で、何も言われずに済んでいた。

 お荷物を外出ししただけなら、やっぱり潰れるのはわかっていてやったとしか思えないのだが、本人たちは「そのつもりはない」と言うのだろう。「そのつもり」さえなければなんでも許される国ならではの言い訳だ。近代人には、まったくもって理解不能だろう。

 そんなルネサスは、今になってやっと多少のクビを切ったものの、産業革新機構とメーカーの支援を受けることで、すぐに危機感などなくなってしまうのだろう。
 しかもこれで高いものは高く売る、ができなくなる可能性がある。結局このままズルズルと安値を押し切られるのだろう。
 経営者もそのほうが楽だから低きに流れてしまう。なので、ここで変えられなければいつかまた倒産しかかる。

 さて、シャープはルネサスとは違う。とにかく工場への過剰投資が問題であるから、もう借金を棒引きにしてもらわないとどうしようもない。ということで、ルネサスとは違って何もしないわけにはいかない。バランスシートの調整が必要だ。

 ここで「理解不能」のその2だ。
 それにしても、シャープはなぜこんなに過剰な設備投資をして、液晶チキンレースをしてしまったのか。
 デフレ、デフレなどと言っているが、シャープは液晶を過剰に供給しすぎて安く売らざるを得なかっただけだ。本当はもっと高く売れたのに、なぜか自分から安値合戦を始めた。自分で蒔いた種なのに、デフレかよ、と言いたい。

 そもそも、韓国メーカーが液晶に参入してきたのは自分が勝てると思ったからだ。日本より安く作れるわけだから勝算があったのは当然だろう。このとき韓国メーカーは、シャープがこの戦いから降りると踏んでいたはずだ。

 しかし、シャープはさらに工場を建てて量産を始めた。これには韓国メーカーもビックリだったろう。これでチキンレース突入だ。

 チキンレースをしたらコストが割高なほうが負けるに決まっている。しかも需要以上に作ってしまったわけだから値段が下がるのは当たり前だ。
 で、値段が下がればますますコストが高いところはきつくなってくる。きついのは当然シャープ本人。勝手にチキンレースを始めて勝手に倒れたというわけだ。

 それにしても、韓国メーカーもここまで安くは売りたくなかったはずだ。シャープに意味もなく値段を下げられてふざけんなよっ!と思っていることだろう。

 まあ、我々にとってみれば液晶テレビや液晶モニターが1万円とか2万円で買えるんだからいいことなのか?いやいや、これで潰れかかった会社を税金で救ってるんだった。テレビが安い分なんか吹っ飛ぶわ。

 で、結局のところ、シャープとルネサスはどう違うのか?といったら、理解不能な行動の中身が違うだけで基本的には同じかも。

【関連サイト】
お金持ちへの取材で明らかになった、お金持ちになるための法則
なぜあなたは出世できないのか?
起業・独立で成功するために知っておくべきこと
放射能から身を守る食品ガイド
記事にできないホンネを集めた脱力系裏ニュースサイト

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