投資の教科書

株式投資20年の投資家が語る 絶対に知っておくべき投資の真実

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孫さんをなめるな!スプリントを買ったのは、そこにスプリントがあったから

 

 今回は、ソフトバンクネタを。

 10/15にソフトバンク(東証1部:9984)がアメリカ3位の携帯電話会社スプリント・ネクステル(Sprint Nextel Corp (NYSE:S.N))を買収すると発表した。買収額はなんと1兆5700億。

 まあ、ソフトバンクはキャッシュを1兆持ってる会社ではあるが(いや、有利子負債も1兆5000億ある)。で、買収資金としてメガバンクとドイツ銀行が1兆6500億円融資してくれるそうだ。

スプリントを買った理由?そんなのあとで考えるさ
 マスコミやらアナリストやらは、買収の狙いやこの巨額の買収資金による財務体質の悪化を懸念などなど、なにやらもっともらしいことを言っているが、それはナンセンスだ。

 買収というのは相手あっての話だ。売り物がないところで買い物の話もしても仕方がない。しかもアメリカ第3位の電話会社なんて売り物は、いつも店に並んでいるものではない。たまたま売りに出たときに、見つけたらその場で食いつく以外、手に入れる方法はない。

 どうやってシナジー効果を出すかなんて買ってから考えるものだ。孫さん(別に友達ではない)という人はずっとそうやってきた人だ。
 普通のサラリーマン経営者なんぞとは人間が違うので、マスコミやらアナリストやらがサラリーマンレベルの頭でどうやって相乗効果を出すんだ?!なんて議論をしても始まらない。

買収のメリットはいくらでも思いつくが
 もちろん、理屈を並べれば何とでも言いようはある。機器の調達も1本化すれば安くすむかもしれない。
 ちなみに、今アメリカの議会にスパイ企業呼ばわりされている話題の中国の通信機器大手、ファーウェイ(華為)からまとめて買えばものすごく安くなるかも。今アメリカにいじめられて弱っているから、グローバルで買うよ、といえばかなり値下げしてくれるかも(今もソフトバンクは国内でファーウェイの基地局や端末をガンガン使っているが)。

 また、アメリカの会社として振舞えることで日本政府に対する電波の割り当ての交渉力が強くなるかもしれない。

 あと、スプリントを日本に進出させれば、ドコモとかKDDIから回線がもらえるかもしれない。

 スプリントは日本で機器を持っていないから、機器を持たない通信事業者として申請をする。で、回線保有業者のドコモとKDDIは、回線非保有業者に回線を開放しなければいけなくなる。

 ソフトバンクはスプリントが日本に進出してきたという形をとって、ドコモたちに回線開放を迫ることができる。これでドコモたちはソフトバンクに回線をプレゼントするはめになる。総務省はケチつけて阻むだろうが、理屈としてはできる。それだけでも日本に対してプレッシャーだ。

 とまあ、こんな風にスプリントを保有するメリットはいくらでも描ける。しかし、孫さんは最初からそれをするために買ったわけではないのだ。要するにいい売り物があったからとりあえず飛びついただけ。買収とはそういうものだ。

売り物が出たら買収、売り物が出たら買収の連続
 そもそも、孫さんはそうやってここまで来た人だ(何度も言うが別に友達ではない)。

 ソフトバンクは、もともとはソフトウェアのパッケージの卸売り会社だ。孫さん1人にアルバイト2人でソフトの箱を売って歩いた。

 ある程度大きくなったら、パソコンブームになったことに目をつけ、いきなり出版社を立ち上げてパソコン雑誌を出版した。ここで伸びて上場した会社だ。

 そうこうしていくうちに、アメリカはネットバブルの兆しが。たまたま孫さんが出会った、ガレージでピザを食い散らかしていた青年がヤフーのジェリーヤンだ。こいつおもしろそうだと1億円ポンと投資したらヤフーが大当たり。で、ネットビジネスに参入したわけだ。これもたまたまだ。

 今度は、ボーダフォン(の携帯電話事業)が売りに出たから買収した。これで今の通信事業会社としてソフトバンクができあがる。このときも1兆7500億円くらい投じている。

 孫さんはこうやって、常にいい案件が転がってきたら、あとさき考えずに飛びついて伸びてきた人なのだ。ここで逡巡(しゅんじゅん)したら誰かに取られてしまう。何も考えずに飛びついたからこそうまくいったのだ。

 無謀ともいえるが天才だからこそともいえる。そういう孫さんに、どういう狙いで買収したんだ?なんて聞くのはナンセンスなのだ。ただ、孫さんは頭がいいのでちゃんともっともらしいことを答えてしまうのだが。

ファンダメンタルに基づきソフトバンク株を評価すると?
 スプリントは足元業績は真っ赤で、ただでさえ脆弱なソフトバンクの財務体質の上にさらに1兆6500億円の負債を抱えたら苦しくなるのは目に見えている。が、これはもうそういう次元の話ではないのだ。

 なので、この案件に絡めてソフトバンク株に投資をするかしないか、なんて話に意味はない。ファンダメンタルに基づくならダメに決まっているからだ。

 しかし、今のソフトバンクがあるのは、すべてファンダメンタルを無視してきたからであって、投資するかしないかは「孫さん」そのものに投資するかしないかの二者択一、孫さんに賭けられると思えば買う、それだけなのだ。

自転車操業上等!
 ちなみに、ソフトバンクを自転車操業で危ないという人が結構いるが、孫さんは自転車操業の克服の仕方なんぞとっくに心得ている。

 その昔、孫さんの部下が、孫さんに(!)「わが社は自転車操業だから大変なんです」と説教したことがあるらしい。その部下は経営者に具申する勇気ある部下の気になって苦言を呈したつもりなのだろう。

 しかし返ってきた孫さんの答えは「自転車操業?俺はゼロから会社を立ち上げたんだ。自転車操業の対策くらい教えてやる。もっと速くペダルを漕げ。」はい、おしまい。

 これが孫さんの思考回路なのだ。そこいらのサラリーマン経営者どものレベルじゃないのだ。

 もっとも、孫さんは多少のリスクヘッジはしているらしい。借りるだけ借りてしまえば大きすぎて潰せなくなるだろうと踏んでいる(らしい)。それはおおよそ合っている。それが一応ソフトバンクなりのリスクヘッジの仕方のようだ。さあ、大暴落後のソフトバンクに投資するかしないか。あとは考えてね。

 念のため最後にもう一度言うが、孫さんとは別に友達ではない。信者でもない。株も買っていない。

【関連サイト】
お金持ちへの取材で明らかになった、お金持ちになるための法則
なぜあなたは出世できないのか?
起業・独立で成功するために知っておくべきこと
放射能から身を守る食品ガイド
記事にできないホンネを集めた脱力系裏ニュースサイト

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