投資の教科書

株式投資20年の投資家が語る 絶対に知っておくべき投資の真実

*

ルネサスと革新機構と外資ファンドと

 

 しばらくシャープの動きがないので、今回はシャープではなく、経営再建つながりでルネサスネタを。

 ルネサスもシャープ同様、企業再生支援機構・・・じゃない、産業革新機構が出張ってきた。トヨタやらパナを引き連れて支援するとかしないとか。

 シャープに支援機構が入るという話は噂レベルだが、産業革新機構が1000億円超の出資を提案・検討しているという話は日経新聞はじめ主要メディアで報道された。
 その約1ヵ月前には、アメリカの投資ファンドKKRが1000億円の出資を提案したとの報道もあった。

 しかし、ルネサスはどちらの報道についても自身が発表したものではなく、革新機構の報道については決定した事実はないとも言っている。まあ、これらの提案・検討の話は事実で、ルネサス本人が触れたくないだけということなのだろうが。

 2つの出資話は、まずアメリカのKKRが出資の提案をしたことで、「外資系企業にさせられてしまうのがイヤ」、「自分たちの都合のよい値段で買えなくなってしまうのはイヤ」という産業革新機構と国内メーカーが慌てて対抗策を出した、という流れらしい。

 KKRのような外資ファンドの再建案は、苛烈なリストラと不採算部門の切り離し、あるいは価格の見直し(今まで不当に安く買っていたメーカーが困る)など至極当たり前かつルネサス当人も顧客の日本メーカーも嫌がるものに決まっている。

 これを避けるために革新機構が利害が一致するであろうメーカーに出資を持ちかけたということらしいのだが、トヨタなどの国内メーカーが革新機構に支援をけしかけたという報道もある。

 革新機構の中は日の丸半導体死守!を手柄だと思っている人たちが銘々勝手に動いていそうだから、どっちのルートもありそうだが。

 ただ、あるネットメディアによると、このメーカーを引き連れた革新機構の出資提案については、出資を持ちかけられたトヨタは速攻で断り、他のメーカーも出資するとしたら渋々という状況らしい。

 メーカーが今までのように独自仕様のシステムLSIを不当な安値で買うことができなくなるのを避けたいと思うのは当然だろうから、革新機構とメーカーの合同出資というのは腑に落ちるのだが、メーカーは乗り気でないという話も気になる。
 一体どっちが本当なんだか。

 と、その前に・・・そもそもエルピーダといいルネサスといい、日本の半導体メーカーが次々と経営破たんや経営不振に陥るってどうなのよ?と思っている人が多いのではないだろうか。

 以前から言っているように日本の製造業敗北の原因は、高コスト体質のまま、いつまでも低付加価値のものを作り続けていたことにある。

 半導体は大きく分けると、メモリ、マイコン、MPUの3つに分けることができるが、この中で最も付加価値の低いメモリを作っていたエルピーダはまさにそのお手本のように経営破たんした。

 残念ながら最も付加価値の高いMPUを作る日本メーカーはなく、かろうじてその中間、つまり付加価値が中くらいのマイコンを作っているのがルネサスだ。

 マイコンは、メモリとは異なりメーカーごとに仕様が異なる特注品という点で付加価値が高い。ということである程度高く売れる製品だ。
 ロットが大きければ安く、少なければ高く、と顧客選別を徹底的に行い価格を調整しさえすれば儲かる世界だ。

 しかし、ルネサスはメーカーに安く買い叩かれて儲からないという構造になっている。厳密には、マイコン自体はそれなりに利益は出せているようだが、システムLSIが足を引っ張っている、というのだ。

 想像するに、どうせマイコンを高く買ってやってる分システムLSIは下げろ、的な交渉で成り立ってきた話だろう。メーカーの下請けいじめのようなものだ。ルネサスも安く売るしかないのならコストを下げればよいのだが、例によって日本企業はリストラができない。

 本来ならば高く売れるものが売れず、コストも下げなければそりゃ儲からんわ。当たり前のことができていないだけだから、ただ当たり前のことをすればすぐに持ち直すはずなのだが、日本メーカーはそれができない。

 という意味でKKRが買い出動すれば一発で改善だ。ルネサスを「まともな形で」残すならこのほうがよい。

 もちろん自力で再建できれば一番よいが、経営者が無責任で決められないでいると、待ってましたとばかりチョロチョロと産業革新機構が顔を出すようになってくる。

 シャープもそうだが、ルネサスも本来ならば潰れる会社ではない。革新機構も外資ファンドも出てくる必要はないのだ。

 ただ、例のメーカーが乗り気でないという話が本当だとすると、メーカー側も自分自身のことで手一杯で、ルネサスに出資をするどころではないのかもしれない。という意味で革新機構の話もなくなって、なんとか自力で再建してもらいたいものだ。

 幸いにも(?)5000人のリストラの募集で7500人も応じてくれた。この勢いで自力再建を、と思ったらこのリストラ費用、当初の見積もりよりたぶん200億くらいオーバーして850億くらい必要になってしまうはず。せっかく今月親会社と銀行から1000億くらい融資してもらったばかりなのに、これでほぼ使い切ってしまうよ。あ~、またお金集めなきゃ!


【関連サイト】
お金持ちへの取材で明らかになった、お金持ちになるための法則
なぜあなたは出世できないのか?
起業・独立で成功するために知っておくべきこと
放射能から身を守る食品ガイド
記事にできないホンネを集めた脱力系裏ニュースサイト

  関連記事

tore
ボーイングと長期契約を獲得した東レに注目

 合成繊維大手の東レが、米ボーイング社から航空機向け炭素繊維複合材の長期契約を獲 …

no image
CB利回り20%のシャープは倒産か(前編)

 前回、リスクの話をしたが、そのリスク、特に信用リスクについて身近に感じることが …

no image
なぜ住宅ローンを組んではいけないと言われるのか(中編)

 前回の続きで、頭金300万円と2700万円の借入で3000万円の住宅ローンを組 …

no image
シャープ、ゾンビ化決定

今回はさすがに登場しなくちゃだめでしょ、シャープウォッチャー。 気が短いので、先 …

no image
支援機構はウロチョロするな(もしウロチョロしていなかったらゴメンナサイ)

 シャープウォッチャー久々の登場。  9/27にシャープとメインバンクが3600 …

sharp
シャープ、CBを返した後が怖い?

 シャープウォッチャー当然登場。決算発表からちょっと遅くなったけどね。でも決算の …

no image
すぐには役に立たない話。でもいつか役に立つ話シリーズ1:アメリカがえらいことになっているぞ(後編)

 オバマ政権2期目の人事がすごいことになっているぞ、という話の3回目。  前回、 …

no image
とりあえず覚えておいて損はない基礎知識

 投資をする際にあると便利なのが、マクロ経済の知識だ。経済と聞いただけで引いてし …

no image
シャープが倒産するかどうかは銀行次第?(後編)

 前回は、シャープがオロオロして当事者能力がなくても、銀行はとりあえず2000億 …

no image
すぐには役に立たない話。でもいつか役に立つ話シリーズ1:アメリカがえらいことになっているぞ(中編)

 オバマ政権2期目の人事がすごいことになっているぞ、という話の2回目。前回の国務 …