投資の教科書

株式投資20年の投資家が語る 絶対に知っておくべき投資の真実

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シャープが倒産するかどうかは銀行次第?(前編)

 

 さて、久しぶりにシャープの話をしよう。8月初旬にも、「CB利回り20%のシャープは倒産か(前編) (中編) (後編)」のタイトルでシャープ倒産の話題を取り上げた。

「中編」では、
 本当はシャープも多少は交渉できる立場にあるはずなのだが、こういうギリギリの交渉ができるのは、シャープが完全に下請けになると腹をくくれているときのみだ。
 しかし、これまでの報道を見ていると、どうもその覚悟はないようだ。日本企業のプライドなどというものではなく、日本人の「決められない体質」と「目先の給料」に目がくらんでオロオロしている状態だ。これでは足元を見られる。

「後編」では、
 そこは、日本の銀行だ。シャープと似たようなものかもしれない(前回)。一昔前なら、銀行にも再建計画にかなり口出しをする(というより命令)大物経営者がいて、 リストラ迫って金利上げてサクッと決まることもあっただろう。
 しかし、今はどうなのだろう。やはり自分の身が大事・決め事はイヤ、の典型的なサラリーマン軍団なのだろうか。だとすると、プレーヤー全員でオロオロしている可能性もある。
 近代国家の理屈としては普通は考えられないが、日本だと起こりうるのは逆ギレだ。下請けはイヤ、リストラもイヤ、と自ら提携をブッタ切ったり、自力再建を放棄してしまう可能性もある。会社がなくなったら元も子もないのに、だ。

 と、こんな風に述べていたのだが、1ヶ月経った今もシャープはまだグダグダやっている。まさにオロオロしている状態だ。いや、ホンハイのテリー・ゴウを怒らせてしまったようだが、シャープが逆ギレしたのか。

 やはり、自分の立場と給料がよほど大事らしい。ボーナスも払うつもりのようだったし。ここへきて1万人のリストラ計画案も出したようだが、そもそもリストラについては積極的ではない。

 まったく、ボーナスは出そうとするわ、クビは切りたくないわとただの駄々っ子のようだが、どれも経営陣が従業員のためを思ってのことではない。いや、従業員のためとは言うのだが、意味が違う。従業員のため=経営陣のためなのだ。フツーの日本人にとっては、そんなの当然なのだろうから説明は不要かもしれない。日本人は平気で「会社は従業員のものだ」と言うしね。

日本人が「決められない体質」なワケ
 だが、日本人の中にもまともな人が少しはいるだろうから、一応「従業員のため=経営陣のため」とはどういうことなのか説明しておく。日本の会社は従業員のものらしいので、従業員が好き勝手やって従業員の中から「みんなで」経営者を選ぶシステムになっている。正当な競争で勝ちあがった人が経営者になり、その人に全権を委ねて会社の舵取りを任せるシステムではない。

 正当な競争で経営者を決めた場合、その他の人は自分の負けを認めなくてはならなくなる。そして、すべての責任を経営者に負わせることを決めたからには、失敗してもしかたないとあきらめなくてはならない。逆に成功した場合、リスクを取った経営者の取り分は相当多くなくてはならない。

 日本人はこれらのすべてがイヤでイヤでたまらないらしく、「みんなで少しずつ」イイ思いとイヤな思いを分け合うことを選ぶ。だれも責任を取らなくて済むように、そして一人が分け前を総取りしないように、だ。

自覚なく、座して死を待つ恐ろしさ
 会社が絶好調のときはそれでもよいかもしれない。何も考えなくても仕事が入ってきて儲かるのなら、その儲けを全員で分けっこしたとしても結構もらえてみなハッピーだ。会社が傾いてきても、だれも責任を取る必要がない代わりにみんなで少しずつ貧乏になることを選ぶ。まわりのみんなと同じだからそれでよしとするわけだ。こうやって無責任な「決められない」、いや「絶対決めない」体質が出来上がる。

 ただ、日本人は強固な意志をもってこれを選択しているわけではない。自覚がないまま結果的にこうなってしまうところが恐ろしいところなのだ。

 こんな発想に基づき、“ニッポン企業”では正当な競争はせず、とりあえず学歴でトップを決める。トップになれなかった人は「あいつは学歴だけでトップになったくせに。能力なんかないくせに。人格は最低のくせに」等々の文句を言えるため、ガス抜きになる。挙句に法的にも本当に責任を取れないただの従業員が会社の経営に口が出せるようになっている(←これ最悪)。

 会社がつぶれてしまったら元も子もないのに、会社のことなどこれっぽっちも考えていない。しかも本人たちは「会社のことを考えている」と本気で思っている。そして、従業員は潰れる直前まで会社は存続し自分は安泰だと思っている。まったく理解不能だが、ニッポン企業とはそういうものだ。

「合理的な行動は和を乱す」というとんでもない発想が会社を食い潰す
 これでわかるだろうが、クビを切れないのは、このみんなで作った「競争しない・責任をとらない・傷はみんなで分かち合う」という和が乱れてしまうからなのだ。そもそもこんな体質がよいわけはないのだが、特に会社が潰れそうな状況下ではこの体質は致命的となる。経営陣と従業員が一体となって会社を食い潰すだけになってしまうからだ。ボーナスを払おうとしていたなどまさに会社を食い潰す行為だ。

 責任も取らないくせにみなで好き勝手言っていたら、そりゃまとまるものもまとまらない。今のシャープが決められないのも、どうせ声の大きいどっかの部長とか課長クラスのヤツが「下請けになってもいいのか」「シャープのプライドを捨てるのか」「雇用は守るべきだ」とか言ったとか、そんな程度のことだろう。だから従業員が口出しできることを「これ最悪」と言ったのだ。

 何度も言うが、これは多くの日本人にとっては当たり前のことなので、おそらくここまで読んで「何言ってんだコイツ?」と思った人がほとんどだろう。そしてそれを批判的に書いているため不愉快、いや怒りすら覚えていることだろう。

 なので、もし「そうは思わなかった」人、「そういうことか、ヤッパリね」と腑に落ちた人がいたら、自分は日本における数少ない近代人だと思って自信を持ってね(でも、言っとくけど、近代人は日本では仲間はずれだよ)。

 話は長くなったが、おそらく今シャープはまさにこの、あちこちで勝手なことを抜かしていて決められない最悪な状況なのだろう。で、せっかく来てくれたホンハイのテリー・ゴウを怒らせた。ブチ切れてサッサと台湾に帰ったのがパフォーマンスであることを祈るしかない。

 でも銀行は今のところまともそうだ。とりあえず2000億円の追い貸しを決めたとのことだしね。ということで続きは次回に。

【関連サイト】
お金持ちへの取材で明らかになった、お金持ちになるための法則
なぜあなたは出世できないのか?
起業・独立で成功するために知っておくべきこと
放射能から身を守る食品ガイド
記事にできないホンネを集めた脱力系裏ニュースサイト

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